〈要請文〉刑事司法制度への政権の不当な介入を許す「検察庁法」改正案の廃案を強く求めます。

刑事司法制度への政権の不当な介入を許す「検察庁法」改正案の廃案を強く求めます。

 

5月8日衆議院内閣委員会において、「国家公務員法等の一部を改正する法律案」が野党委員欠席のまま審議入りしました。

本来、「検察庁法」改正廃案要請高齢社会への対応としての国家公務員の定年延長法案と、政権による検察中枢の人事介入への道を開く「検察庁法」改正案を一括で審議することなどあり得ません。各条文を丁寧に徹底的に論議すべきです。こうした議会制民主主義を愚弄する安倍政権の杜撰な国会運営は、2015年の「安保関連法案」11本の一括審議・強行採決を思いださせます。今回の内閣委員会では、野党の反対を委員長職権で押し切って審議を開始し、さらに野党が求めた法務大臣の出席も拒むという異例のものです。

1947年の制定以来、「検察庁法」下での検察官の定年延長は一度として認められてきませんでした。しかし今回の法案では、内閣・法務大臣の判断で延長可能とする規定が新たに設けられます。さらに、役職者の63歳での「役職定年制」を規定しながら、同じく内閣または法務大臣の判断による役職勤務延長が、定年を超えてまで可能とする規定が盛り込まれています。

検察官は起訴権限を独占し、政治家をも捜査の対象とすることができる強大な司法的権限を有します。それゆえ、政治的な中立性、独立性が強く求められます。それを担保してきたのが、これまでの検察官の厳格な定年制でした。国家公務員法の定年延長特例規定は検察官には適用されないと、国会でも繰り返し確認されてきたものです。

それを根本から揺るがしたのが、今年1月31日の東京高等検察庁検事長黒川弘務氏の勤務延長の閣議決定です。安倍政権下で当たり前となってしまっている、きわめて恣意的な「法の解釈変更」によるものでしたが、今回の「検察庁法」改正により、政権による検察官人事への恒常的な介入が可能となってしまいます。このやり方も、「安保関連法案」成立の際に酷似しています。

私たち市民ネットワーク千葉県は、今回の「検察庁法」改正案は、「法の支配」「権力分立」の要とも言える刑事司法の公正と独立を蹂躙し、司法に対する主権者の信頼を大きく損なうものであると考え、強く反対します。

さらに、説明責任も果たさず、数の暴力で強引に進められる安倍政権下での国会運営にも徹底的に抗議します。

新型コロナウイルス感染拡大に対する安倍政権の対応が、後手後手かつ場当たり的に終始しているために、私たちの市民生活は広い範囲で混迷と疲弊の極みにあります。現国会の最優先課題は市民生活への支援と再建の道筋をはっきりとつけることであることは明白です。司法への政権の恒常的な介入を目論む「不要・不急」な法律改正など私たち主権者は求めていません。

「検察庁法」改正案の廃案、そして黒川弘務氏の勤務延長の閣議決定を即刻撤回することを安倍政権に要求するものです。

2020年5月12日
市民ネットワーク千葉県

刑事司法制度への政権の不当な介入を許す「検察庁法」改正案の廃案を強く求めます。(PDF)