〈声明文〉3.11福島原発事故から10年に寄せて

東日本大震災から10年が経過しました。犠牲になった方々のご冥福をお祈りするとともに、遺族の皆さまには改めてお悔やみ申し上げます。
また、今なお故郷に戻れない避難者の皆さまの大変なご苦労をお察し申し上げます。

 東京電力福島第一原発の大事故から10年、未曾有の原発大事故の影響を、「放射能汚染はたいしたものではない」「健康被害も少ない」「風評被害に過ぎない」と矮小化しようとする動きが、政府やマスコミの中で強まっています。
その裏で着々と進められているのが、「本当の被害の隠蔽と見せかけの復興の演出」そして「原発への回帰」であることを見逃してはならないと思います。
 10年前に発令された「原子力緊急事態宣言」は現在も解除されていません。10年の時限立法で設置された「復興庁」をさらに10年間延長する法改正も昨年行われました。まだ何も終わっていない、これが「あれから10年」を考える上での出発点なのです。


 にもかかわらず、全党派、全会一致で成立した「子ども・被災者支援法」は、自民党政権のもとでその理念が骨抜きにされています。当事者の意思と行動を最大限尊重すべきであるのに、自主避難者への一方的な支援の打ち切りが続きました。そこに今、コロナ禍が生活上の困難さに輪をかけています。福島県も国も避難者の実数の正確な把握も行っておらず、いわんや生活実態の的確な調査も行っていないのが実情です。被ばく防護政策もうやむやなまま、「帰還」だけを促し、あたかも「復興」が進んでいるかのように見せかける演出だけが目立ちます。

 私たち市民ネットワーク千葉県は、まず同法の理念を誠実に遵守し、被災者を一人も取り残さない具体的な施策の立案と予算措置を強く求めます。同時に、データ隠しや改竄、分析結果の迷走が続いたにもかかわらず、縮小や打ち切りが取り沙汰されている「甲状腺学校検査」の継続と精確な分析を、国の責任において行うよう強く要求します。

 一方、菅政権が打ち出した「カーボン・ニュートラル」方針に基づく「グリーン成長戦略」「エネルギー基本計画」に原発再稼働・新設が公然と盛り込まれようとしていることには、心からの怒りを感じざるをえません。福島原発の大事故後に日本社会に盛り上がった「脱原発」の世論を、自民党政権は完全に無視し続けてきました。そしてあらゆる意味で不合理であり、現実性のない原発に固執し、そのリスクとコストを私たち市民に強いようとしています。市民ネットワーク千葉県は、民主的で主権者に開かれた議論に基づいた、未来に向けたエネルギー政策を求めます。
 2月19日、東京高裁は、この千葉県に自主避難された方々が起こした損害賠償訴訟に対し、東電と国に同等の責任があることを認めました。昨年の仙台高裁での判決に続く快挙であり、国は判決を真摯に受け止めるべきです。

 私たちは国に対し、エネルギー基本計画を抜本的に見直すこと、そして、原発事故の被害の真の姿を把握し、被災者全員の救済・賠償に取り組むことを強く求めます。

2021年3月11日
市民ネットワーク千葉県
共同代表 伊藤とし子 小室美枝子