「警察法改正案」の拙速・杜撰な成立に抗議し、施行の撤回を求めます

 3月30日、参議院本会議で「警察法の一部を改正する法律案」が、共産党とれいわ新選組の反対のみで可決成立しました。早速4月1日より施行されることになります。
 これに先立つ29日の参議院内閣委員会では、わずか3時間たらずの審議で採決されています。3月2日の衆議院内閣委員会での審議も3時間半。私たち市民ネットワーク千葉県は、本法案の重要性と問題の深さから、このような少ない時間で、また質疑内容も本法案の問題性の核心に迫るものがほとんどなかった状態での成立・施行を認めることはできません。

 本法案の問題点は以下の3点に集約されます。
①   戦前の国家警察による人権弾圧への反省から、捜査権限は自治体警察にのみ認められていまし た。しかし、本法案では戦後初めて警察庁に捜査権限を付与することになり、民主的警察体制を根本から覆し、警察庁が直接指揮する新たな国家警察制度への道を開くものです。
②日本国憲法第21条で絶対的に保障されている主権者の言論と表現の自由、通信の秘密を侵害し、誰もが関わっている情報通信分野での官民合同による監視を大幅に強化するものです。
③実態の見えない「国際的サイバー攻撃」「サイバー攻撃集団」への曖昧な不安感を煽り、それに乗じてこれまで認められなかった日本の警察力の海外活動を認め、自衛隊の海外活動との連携への道を開くものです。

 ここ1年足らずの間に、「デジタル改革関連法」「重要土地調査規制法」と、個人情報と個人の行動を監視・規制・処罰する法律が不十分な国会審議で成立・施行されています。「警察法改正案」は、それに加えて個人の思想・信条、コミュニケーションとプライバシーをも徹底的に国家の監視・管理下におくものです。
 さらに警察庁の捜査権は「重大サイバー事案」に限る、と限定されているとは言え、国会審議で明らかになったように「サイバー事案」と「重大サイバー事案」の区分は極めて曖昧であり、法文上の用語の矛盾すら露呈させています。いくらでもその範囲を拡張することができるというのも、上記2法と同じ構図であり、自治体警察の力を弱め、ひいては地方自治そのものの軽視と弱体化も懸念されます。
 これまでも、政権による強引な国会運営により、日本国憲法で保障されているはずの私たちの人権を、国家が侵害し制限する法律と制度が次々と実現されています。その総仕上げが、今回の警察法改正案の成立・施行ではないかと、強く懸念します。

 私たち市民ネットワーク千葉県は、日本国憲法の理念と原則に則り、1人1人の人権と地方自治が尊重される社会の実現を目指して活動してきました。その立場から、今回の「警察法改正案」の拙速・杜撰な成立は断じて許容出来ません。法施行の撤回と法案審議の差し戻しをここに強く要求します。

2022年3月30日

市民ネットワーク千葉県
伊藤とし子
岩﨑 明子