〔抗議声明〕「敵基地攻撃」など戦争と直結する防衛3文書改定の白紙撤回を求めます。

 12月16日、政府は国の外交・防衛政策に関わる3文書「国家安全保障戦略(NSS)」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の前倒し改定を閣議決定しました。今回の改定は、日本の安全保障政策を従来の「専守防衛」から大きく変質させ、日本社会のあり方を根本から変えるものです。敵基地攻撃能力と長距離ミサイルの保有は、米軍と自衛隊の一体化を推し進め、集団的自衛権の行使を常態化させるものであり、そのための防衛費の大幅増額は、市民生活を犠牲にすることを前提としています。まさしく、挙国一致体制と戦時経済の再現と言っても過言ではありません。

 これほど重大な政策転換が、あまりにも短期間かつ国会の関与もないまま非公開の密室で協議され、議事録も公開されないという事態は、憲法の「国民主権」「平和主義」を完全に無視した暴挙であり、私たちは認めるわけにはいきません。
 改定では、中国をはっきりと「脅威」と位置づけ、中国の対外的姿勢や軍事動向を「わが国と国際社会の深刻な懸念事項であり、これまでにない最大の戦略的挑戦」と明記しました。さらに「米国の安全保障への最も深刻な挑戦」とも表現し、集団的自衛権を行使し、米国とともに「敵国」である中国に対抗する姿勢をあらわにしています。そこには、外交努力で戦争を避けるという姿勢は微塵もありません。

 然るに、11月26日に投開票された台湾統一地方選挙では、対中国強硬姿勢の与党・民主進歩党(民進党)が敗北し、台湾危機の当事者たる台湾市民が、中国との平和的関係を選ぶ形になりました。多くの有権者が、中国との対立を「不要なケンカ」と判断し、「台湾をアジアのウクライナにしてはならない」という強い意志を示したのです。このことを、私たち日本人はもっと評価し学ぶべきと考えます。
 さらに、岸田首相は来年度からの5か年の「防衛力整備」に、現行の27兆円の1.5倍にもなる43兆円を確保することを一方的に指示しました。しかもその財源として増税と復興特別所得税を期間延長までして充て、「国民自らの責任で」と言い切り、国民の負担を益々増やす姿勢です。

 一方で、後期高齢者医療制度は窓口負担だけでなく、保険料も大幅に増額され、介護保険も確実に保険料は上がり、サービスは抑制される方向です。すでに税・社会保険の国民負担率は48%(2021年)に達し、所得が増えない中での物価高騰に、国民の暮らしは悪化する一方です。教育への公的支出も、2020年のOECD調査によると、日本は38か国中37位という有様です。このような状況での軍事費大幅増額には断固反対し、教育や福祉を最優先する税金の使い方を強く求めます。

 私たち市民ネットワーク千葉県は、「地域から平和をつくる」「地域から憲法を生かす」を政策の大きな柱として活動を続けてきました。沖縄の基地問題にも積極的に取り組み、米中間での戦争で沖縄が再び戦場にならないよう声を上げてきました。
 今日本がやるべきことは、対米追随一辺倒ではなく、朝鮮半島の非核化に向けた外交交渉の再開や、中国を「脅威」と認定しないなど、アジア諸国との対話を強化することです。
 憲法の根幹を破壊し、戦争に直結する今回の防衛3文書改定の白紙撤回を強く求めます。

2022年12月19日
市民ネットワーク千葉県
共同代表 伊藤とし子 岩﨑明子