東京都迷惑防止条例「改正」に反対する要請書
東京都の迷惑防止条例の改正案が、警視庁から出され、その内容は、市民活動や労働運動また、マスコミの取材活動を規制する恐れがあるとして廃案を求め要請書を提出しました。
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東京都議会 会派 各位
迷惑防止条例「改正」に反対する要請書
今回の都議会に提出された迷惑防止条例「改正」案(「公衆に著しく迷惑をかける暴力行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例案」)は、労働運動や市民運動、マスコミ等の報道・取材活動など、憲法が保障する言論表現の自由(21条)や労働基本権(28条)を捜査機関が恣意的に侵害することが可能となる内容であり、廃案を強く求めます。
「改正」案は、現行の規制に加えて「みだりにうろつくこと」「監視していると告げること」「電子メール(SNS含む)を送信すること」「名誉を害する事項を告げること」「性的羞恥心を害する事項を告げること」を付け加え、新たにこれらの行為を規制の対象として、罰則を重くするものです。
1.立法事実が不明確です
警視庁は、スマートフォンや電子メール・SNSの普及により現行で対応できない事案の増加等を「改正」の理由にしていますが、警視庁が作成した「新しく規制される行為」を見ても、なぜ規制をしなければならないか不明確です。
2.警察による濫用の危険が高まります
そもそも現行の迷惑防止条例自体が、「悪意の感情」によるつきまとい行為等を規制するため、警察による濫用の危険があります。また、内心に踏み込み、自白強要の恐れもあります。「改正」案は、捜査機関による市民運動・住民運動・労働運動・取材活動への規制をいっそう容易にするものです。特に「監視していると告げること」「名誉を害する事項を告げること」は極めて濫用の危険が高いものです。迷惑防止条例は、「ねたみ、恨み、その他の悪意の感情の充足」というあいまいな目的があれば、通常は処罰されない行為が処罰されます。
また、会社や法人相手でも成立します。したがって、政権批判のための取材活動や、労働組合が会社を批判したり、市民が街頭宣伝で総理大臣を批判する行為が処罰される可能性さえあります。しかも、これらの処罰のために被害者の告訴は不要であり、捜査機関の判断で逮捕・起訴が可能です。
3.憲法違反です
会社や企業、行政等に対する要請行動、抗議行動、取材活動は、正当な労働運動(憲法28条)や市民運動、個人によるSNS等の表現活動、マスコミ等の報道・取材活動等(憲法21条)として日常的に行われており、労働・公害・薬害・住民運動、消費者事件等で重要な役割を果たしています。しかし、この「改正」案では、そうした憲法によって保障された活動がのきなみ規制対象とされる可能性があります。もしも成立すれば、警察の一方的な判断で、憲法の保障する諸活動まで弾圧され、団体等に対する組織弾圧や政権批判を萎縮させるために活用される危険が大きいと言わなければなりません。また、憲法94条は、「法律の範囲内で条例を制定することができる」としています。今回の「改正」案は、法律により禁止されていない行為を禁止・処罰するものであり、憲法94条にも違反します。
迷惑防止条例「改正」案を廃案にするよう、強く要請します。
2018年3月20日
要請団体 市民ネットワーク千葉県