自衛隊中東派遣に反対する声明文
自衛隊中東派遣に反対する声明文
政府は昨年12月27日に海上自衛隊(以下「海自」)の護衛艦1隻と哨戒機2機の中東への派遣を閣議決定しました。海自の哨戒機P-3C 2機は1月11日那覇基地を出発し活動を始めています。そして、本派遣に要する費用として、本年度中は予備費より5億720万円を拠出、来年度は約46億8000万円を当初予算内で処理することを閣議決定し、2月2日には護衛艦「たかなみ」が横須賀港を出港予定とのことです。任務は1月20日より12月26日までとされています。
今回の海自「派遣」の根拠は「防衛省設置法」第4条18が定める「調査・研究」とされ、いわゆる軍事行動はもとより、自国の船舶の護衛もできません。あくまでも「中東海域での日本関係船舶の航行の安全確保」のための「情報収集」とされています。
政府とマスコミは「国内原油需要の90%を中東に依存している」ことを強調して、今回の派遣の正当性を印象づけようとしていますが、「調査・研究」を目的とする以上具体的な「安全確保」行動はできません。仮に「海上警備行動」が発令されても、対象は日本国籍船のみです。さらに、中東の原油の大半がホルムズ海峡経由で運ばれていますが、今回の派遣での活動範囲に「ホルムズ海峡」は含まれてはいないのです。目的や必要性、が不明な派遣です。
昨年7月、米政府は中東海域での軍事的緊張を理由に日本も含む60数カ国に「有志連合」参加を呼びかけました。結果としてイギリス、オーストラリアを含む6カ国の有志連合=多国籍軍が活動を開始し、バーレーンにある米第5艦隊司令部に「多国籍軍司令部」が発足しています。
日本は「有志連合」には参加していませんが、今回の「中東派遣」の活動範囲と活動内容は多国籍軍による「オペレーション・センチネル(番兵作戦)」のそれに酷似しています。そして、今回の派遣により得た情報を「有志連合」と共有するために、海上自衛隊連絡幹部を「多国籍軍司令部」に派遣することも決定しています。
つまり、今回の自衛隊「中東派遣」は、実質として米主導の「多国籍軍」への参加という専守防衛を逸脱する行為であり、長期にわたって米第5艦隊と一体となった海上行動を行うことだと私たちは判断しています。「不測の事態」の場合は安保法制に基づき「海上警備行動」を発令、とされていることもそのことを裏付けています。この米海軍との一体化の公然たる推進、安保法制の実働化という隠された意図を糊塗するため、政府は国会での議論は一切行わず、臨時国会閉会後に閣議決定、哨戒機出発後の1月17日にはじめて衆参安全保障委員会での審議を始めるという国会無視の姿勢を貫きました。文民統制の観点から問題があると言わざるをえません。
1年間という長期にわたり、緊迫する情勢の中で自衛官を危険にさらしかねない派遣である以上、「テロ特措法」「イラク特措法」の例に倣い、特措法案を提出して国会での徹底的な議論と国民への説明責任を果たすべきです。そして、今日本に求められているのは、護衛艦=軍艦を派遣して中東地域の軍事的緊張をさらに高めることではなく、アメリカとイラン双方に親和性を持つことを自認する日本の地道な外交努力のはずです。
私たち市民ネットワークは、海自中東派を即刻中止し、国会での議論と徹底的な平和外交につとめることを強く求めるものです。
2020年1月23日 市民ネットワーク千葉県