〈声明文〉「新型インフルエンザ等対策特別措置法」及び「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」改正案の審議開始に対する声明

「新型インフルエンザ等対策特別措置法」及び「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」改正案の審議開始に対する声明

報道されているとおり、政府は「新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下特措法)」及び「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下感染症法)」の改正案を閣議決定し、野党との修正を経て、29日に衆議院での審議を開始しました。早期の成立を図るとしていますが、私たち市民ネットワーク千葉県は、修正を経たとはいえ、本案件には重大な瑕疵があるものと考えています。

まず第1に、両改正案ともこれまで以上に都道府県知事の権限を強化し、さらに「行政罰=過料」を設けることによる規制の強化を図っていることです。「罰則」を設け、本来保護されるべき感染者や事業者の権利の制約を強制するのであれば、その権利規制の必要性を十分に説明し納得を得ること、そして基本的人権が完全に保障されることが要件です。しかし、今回の改正案には、まだその実態が十全に解明されてはいない新型コロナウイルスが対象であるため、医学的有効性に疑問が残ります。また感染者と事業者には罰則を定めつつ、医療関係機関への罰則はなく、何よりも必要な良質で適切な医療の供給は担保されていません。時短等の要請に応じた業者への財政的な措置は「講ずる」とされ義務化されていますが、具体的なところは「附帯決議」「国会答弁」に託されているところも問題です。感染者やコロナ受け入れの医療従事者への差別防止についても、「啓発の責務」で済まされています。

次に、「特措法」改正で新設された「蔓延防止等重点措置」は、その発動要件等が未確定なまま、すべて閣議決定による政令に任され、知事に多大な権限を与えてしまいます。「緊急事態」という「有事」と、感染が蔓延していない「平時」との間をつなぐグレーゾーンの設定はきわめて曖昧であり、国会への報告も「附帯決議」で処理されようとしています。政権側・行政側の恣意的な運用が懸念されるところは、2015年の「安保関連法案」に酷似しています。

そして、「感染症法」改正案は、「特措法」とは別の法律であるため、「蔓延防止等重点措置」「緊急事態宣言」とは関係なく、常時感染者の監視と強制的な措置が行われる可能性があります。医療の専門家からも、「過料」の発生がかえって診療の抑制に繋がるのではないかとの懸念が挙がっています。コロナ禍で生活全般が逼迫する中、感染者の生活実態に即した対応が図られるべきです。

私たち市民ネットワーク千葉県は、上掲の問題点を踏まえ、以下の3点に基づいた慎重な法案審議を求めるものです。
・「蔓延防止等重点措置」と「緊急事態宣言」との区分を明確にし、その発動要件や命令内容等の決 定には、国会の関与を義務づけること。
・「感染症法」前文の精神に則り、何よりも感染者の基本的人権を最大限に尊重し、真に実効性のある感染防止策を実施すること。
・協力する医療機関、事業者への十分な財政上の措置を実施すること。

2021年1月31日
市民ネットワーク千葉県 共同代表 伊藤とし子 小室美枝子