〔抗議文〕福島第一原発事故によるALPS処理水の海洋放出処分の決定に抗議し撤回を求めます

内閣総理大臣 菅義偉
経産大臣 梶山弘志
復興大臣 平沢勝栄
農水大臣 野上浩太郎
内閣官房長官 加藤勝信
資源エネ庁 原発事故収束対応室

4月13日、政府は関係閣僚会議において、東京電力福島第一原発敷地内にタンク保管されているALPS処理水の海洋放出処分を正式決定しました。

 現在、福島県内の44自治体議会(75%)が反対もしくは慎重という態度を表明し、福島県漁業協同組合連合会は、「海洋放出には断固反対」「タンク等による厳重な陸上保管を求める」意見書を出しています。2011年4月以来高濃度の汚染水の流出が続いている中、政府と東電は、「タンク内のALPS処理水」に関しては「関係者の理解なしには処分をしない」と2015年に文書で約束したはずです。にもかかわらず、今回海洋放出を一方的に決定したことは、これら地元関係者の意思を全く蔑ろにするもので、許されるものではありません。

 私たち市民ネットワーク千葉県は、これまでも意見書案提出など、処理水海洋放出に反対し続けてきました。ここに重ねて処理水海洋放出に反対の意を表明し、今回の決定に強く抗議するものです。
 現在1,000基を超えるタンクに保管されている処理水は125万トンに達しています。含まれるトリチウムは約860兆ベクレル、さらに1200兆ベクレルが残存していると推測されます。トリチウム以外にも炉心溶融に由来する高濃度の放射性物質が残留していますが、その総量は公表されず、東電が説明する「二次処理」の効果も不明です。

 除去不能なトリチウムは「希釈して」放出との計画ですが、被曝については「濃度」ではなく「総量」が問題となることは常識です。政府もマスコミもトリチウムの放射線が微弱であることや、一般の核施設からも日常的に放出されていると喧伝し、ひたすら問題を「風評被害」に矮小化しようとしています。しかし、トリチウムはあくまでも放射性物質です。国が引き合いに出すWHOの飲料水基準1万ベクレル/ℓに対し、EUは100ベクレル/ℓであるように、その環境と健康への影響についての所見も定まっていません。放射性物質であるトリチウムは他の放射性物質と同様に、環境への放出は可能な限り避けるべきなのです。

 以上のことから、市民ネットワーク千葉県は専門家や市民団体とともに、タンクによる保管の継続とモルタル固化処分を主張してきました。こうした信頼性の確立している技術を一切検討せず、昨年海洋放出ありきの報告書を取りまとめて以来、一切の正式な説明会も公聴会も開催することなく今回の決定に至りました。国の非民主的な決定手続きも大きな問題です。また、先般の原子力規制委員会からの柏崎刈羽原発の運転禁止命令でも露わになったように、処理事業の主体である東電の責任能力の欠如した企業体質も大きな不安材料です。

すでに漁業団体ほかから抗議の声が上がっています。中国、韓国政府からも厳重な抗議がなされました。政府、東電は、放射性物質の正確な総量の公表、二次処理能力の実証をはじめ、情報公開に努め、客観的な科学的知見と開かれた民主的な議論に基づいて、安全で確実な処理水の処分方法を決定すべきです。10年間原発事故の影響に苦しめられてきた漁業・農業関係者をはじめとした国内外の懸念と抗議の声を真摯に受け止め、ALPS処理水海洋放出処分の決定をすみやかに撤回するよう強く求めます。

2021年4月16日

市民ネットワーク千葉県
共同代表 伊藤とし子
     小室美枝子