〔抗議声明〕「デジタル改革関連法案」可決・成立に強く抗議します

 5月12日、参議院本会議において「デジタル改革関連法案」が可決・成立しました。
28項目もの付帯決議のついた衆議院決議に続く参議院での審議で、強調される「利便性」の裏での、個人情報保護のあり方などの問題性がさらに明らかになりました。。法案は6つありその中の一つが「整備法案」で関連法の改正を一気に行い、含まれる法律は135あります。整備法案で抜本的な改正が行われるのが、個人情報保護法制です。この改正によりもっとも影響を受けるのが、自治体の個人情報保護条例です。

 しかし、63本の法案を一つに束ね、衆議院で27時間余り、参議院でも25時間という拙速な審議で、十分な議論も行われないままの可決・成立となりました。本法案は、菅首相が総裁選公約に掲げた「デジタル庁」創設に向けてのものです。日本の「デジタル行政の遅れ」を強調し、「利便性の向上」のために、「医療・教育のデジタル化」「マイナンバー制度の拡充と普及」「政府と自治体の個人情報保護システムの統一」が謳われています。具体的には自治体の持つ個人情報を「匿名加工」したうえで民間に提供することが目論まれています。参議院の審議ではこの個人情報の利活用について、いくつもの問題が指摘されました。

 私たち市民ネットワーク千葉県は、衆議院での審議時にこの法案について学習会を開催し、本法案の問題性を共有しました。 法文を精読するならば、その内実が、行政機関、民間、独立行政法人が有する膨大な個人情報を、「デジタル庁」が一括管理し、「資源」として活用しようという意図であることは明白です。
防衛省は、国を相手取った米軍や自衛隊の基地関連訴訟の原告団名簿を、そして全国30の国立大学法人は、入試点数と授業料免除者名簿を、それぞれ外部に提供しようとしていたことが明らかになりました。これは明らかに憲法に違反する個人のプライバシー権の侵害です。個人の権利の保障についてほとんど言及のない本法案の施行により、このような人権軽視が公然と進められることにおおいに懸念が残ります。

 また、強力な権限を有する「デジタル庁」設置で、首相と内閣情報調査室により全国の個人情報が際限なく収集され、保有・活用がされます。にもかかわらず、そのためのチェック機関としての個人情報保護委員会の機能は弱く、集約された個人情報がマイナンバーにひもづけされることで、その漏洩のリスクや不正使用の危険性が大きく増大します。これは、行政が保有する情報を分散化することでセキュリティを高めようとしている世界の傾向に逆行するものです。

 私たち市民ネットワーク千葉県は、「自己情報コントロール権」をはじめとした人権の保障について万全の体制を整えること、また国に先行して整備・運営されてきた地方自治体の個人情報保護行政の独自性が今後も担保されること、この2点を国に強く求めます。これらが確保されるまで本法案の施行は保留するべきです。
 よって、私たち市民ネットワーク千葉県は、強力な監視社会を生み出しかねない本法案の一方的な可決・成立に強く抗議します。

2021年5月14日                                             

市民ネットワーク千葉県
共同代表 伊藤とし子
小室美枝子