〈抗議声明〉「GX脱炭素電源法」の成立強行に抗議し撤回を求めます

「GX脱炭素電源法」の成立強行に抗議し撤回を求めます

 5月31日、参議院本会議において「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」(以下「GX脱炭素電源法」)が、政権与党他の賛成を得て可決成立しました。私たち市民ネットワーク千葉県は、「反原発」「環境保護」の立場を貫いてきた市民の地域政党として、「脱炭素」の美名のもとで、危険きわまりない原子力発電を政策として過剰に優遇し、将来にわたって私たちの負担で延命させようとする本法案の可決・成立の強行に強く抗議します。
 本法案は、2月10日に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」に基づいて「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」(以下「GX推進法」)とともに上程されました。すでに同法案は修正を経て5月12日に成立しており、国債発行も含む150兆円という巨額の資金を「脱炭素」の名目でつぎ込むことを経産省の裁量で実行することが認められました。その内容を原発延命に集中させていくのが、今回成立した「GX脱炭素電源法」です。


 まず第一に、今回の「GX 基本方針」において、12年前の東京電力福島第一原子力発電所の大事故の教訓が一顧だにされなかったという倫理的姿勢と責任について、私たちは政府を糺します。事故原発の現場の実情、避難民の生活救済、ALPS汚染水と汚染廃棄物の処理方策、すべてが未解決です。にもかかわらず、本方針策定後全国10か所で開催されたた「全国説明・意見交換会」は福島では開催されず、国会の審議過程で野党及び参考人から繰り返し求められた福島での公聴会開催も行われませんでした。被災者の声も反映させず、大事故についての国と電力会社の責任をうやむやにしたままの原発延命など許されるものではありません。

 第二に、その延長として、本来ならば事故の当事責任者である電力会社が担うべきさまざまな責任を「国の責務」にすり替えたことを追及します。「国の責務」とすることは、結果として、世界の趨勢として衰退することが明らかな原子力産業を無意味に保護し、技術的に不安定でありコスト的にも問題の多い原子力発電を利用者・納税者の負担で支えることが正当化されることになります。そこには、仮に次の大事故が発生した際の算定不可能な負担も含まれるのです。

 そして、福島原発大事故を経て2012年に確定したはずの「「推進」より「規制」」、「可能な限り原発依存度を低減する」という国の方針が、主権者の意思を顧みずに抜本的に変更されたことが問題です。それを如実に示すのが、現在の上限60年という異常に長い原発の運転期間を、規制委員会ではなく推進する側の経産大臣の意向でいくらでも延長できるよう改変されたことです。老朽原発であり被災原発でありながら再稼働が準備されている東海第2原発に隣接する千葉県民として、決して容認できるものではありません。

 最後に、これほど重要な内容を含む法案を5本の「束ね法案」として、衆参ともに1か月足らずの拙速な審議で可決成立させた現政権の国会軽視、および3000件を超えるパブリックコメントを完全に無視し、主権者の意思を蔑ろにした傲慢な姿勢に対し、民主主義の根幹を破壊する暴挙として強く抗議します。
 以上、私たち市民ネットワーク千葉県は、今回の「GX推進法」ならびに「GX脱炭素電源法」の撤回と、真の意味で環境に配慮した持続可能なエネルギー政策の公正な立案と実施をここに強く求めます。

2023年6月6日                 

市民ネットワーク千葉県
共同代表 川口えみ 伊藤とし子 岩﨑明子