〈抗議声明〉問題のある「LGBT理解増進法」の可決成立に抗議し、内容を見直すとともに、不当な運用がなされないよう強く求めます。

問題のある「LGBT理解増進法」の可決成立に抗議し、内容を見直すとともに、不当な運用がなされないよう強く求めます。

6月16日の参議院本会議において、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」(以下 LGBT理解増進法案)が、成立しました。

 私たち市民ネットワーク千葉県は、本法案では本来の目的としていたはずの「学校でのいじめや就職時における差別、職場での差別的取り扱いを解消する」が極めて曖昧にされ、「差別禁止」ではなく「理解増進」にすり替えられてしまっていることに強く懸念を表明します。しかも、直前の G7広島サミット首脳コミュニケにおいて「LGBTQIA+の人々の人権と基本的自由に対するあらゆる侵害を強く非難する」と明記されたにもかかわらず、国連自由権規約人権委員会から2014年と2022年に包括的差別禁止法の制定と性的指向・性自認(SOGI)差別禁止の法整備を勧告されてきた当の議長国日本で、このような後退した内容の法律が成立したことは、日本の人権意識の貧しさを世界に露呈させた大問題と考えます。

 まず第一に、「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう留意」「この場合において、政府は、その運用に必要な指針を策定するものとする」と条文に明記されたことです。マイノリティよりもマジョリティの意向が優先されかねず、しかも政府(国)が、自治体等が先行的に行ってきた LGBT 施策に制限を加える危険性も出て来ました。

 さらに「多様性に関する国民の理解が必ずしも十分でない現状に鑑み」とされ、「理解がない」を理由にした自治体の施策の抑制、学校教育における「家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ」により、家庭や地域からの協力を得られない場合や、恣意的な保護者からのクレームが来た場合は、LGBTQ+に関する啓発活動すらできないとされる危険性あり得ます。

 その上に、これまで「障害」と結びつけかねられない「性同一性」に代わり、全ての自治体等で採用されてきた「性自認」に代わって「性的指向及びジェンダーアイデンティティ」に文言を統一させたことです。各自治体等の変更手続きの煩瑣さはもとより、場合によっては「性同一性」への更なる後退もあり得るでしょう。

 衆参わずか1回の短時間委員会審議のみでの可決成立という本法案審議の過程で明らかになったことは、性的マイノリティ当事者への政府の問題意識の低さです。3年後の見直しを待つことなく、性自認に関する差別を許さない世界の潮流を見据え、本法の内容を見直し、また不当な運用がなされないよう施行状況の客観的検証を行うよう、強く政府に求めます。

2023年7月14日

市民ネットワーク千葉県
共同代表 川口えみ 伊藤とし子 岩﨑明子