〔声明〕地方自治法改正の強行に抗議し、改正部分の撤回を求めます。

〔声明〕地方自治法改正の強行に抗議し、改正部分の撤回を求めます。

 6月19日、参議院本会議において「地方自治法の一部を改正する法律案」が、与党と日本維新の会、国民民主など一部野党の賛成により可決・成立しました。市民ネットワーク千葉県は、市民の地域政党として、地方自治の根幹を侵害するものである今回の改正強行に抗議し、改正部分の廃止を強く求めるものです。

 そもそも地方自治は、日本国憲法第92条において、人権の保障と民主主義の実現のために、地方自治体の自治を認め、国と自治体に権限を分配すべきことが「地方自治の本旨」として保証されているものです。そのことは2000年施行の地方分権一括法において、「国と地方は対等な関係」としてより具現化され、今日に至ったはずです。地方公共団体は個別法の根拠がなければ国の関与を受けないことが地方自治法で規定されており、「法定受託事務」のみ自治体側の違法行為などの特別な場合に限り国から「是正の指示」ができる一方、「自治事務」については国の「指示権」は基本的に否定されました。

 ところが、今回の「改正」により、双方区別なく、個別法に規定がない場合でも国の指示権発動が可能となりました。しかもその発動の要件が「大規模な災害や感染症のまん延その他」という極めて曖昧かつ抽象的なものであり、とりわけ「その他」が何を指し「(93ある)個別法が想定しない事態」とはどういう事態なのか、一切明らかにされませんでした。

 感染症まん延、大規模災害が強調されていますが、感染症法はコロナ禍後改正され、国と自治体及び関連団体との連携が明示されています。また災害対策基本法においても、大規模災害時での国の対応が規定されています。本改正の立法事実はありません。

 さらに、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」は「発生するおそれ」だけでも指示権の発動ができるのです。各大臣が必要と認めれば閣議決定のみで発動可能、当該自治体の意見聴取は努力義務でしかなく、国会への事後報告のみが法案修正で加わっただけで、国会の関与も事実上皆無です。政府の指示権の恣意的濫用への歯止めについての議論は、与党及び日本維新の会の議員によって封印されたことも見逃すことは出来ません。

 つまり、政府が「上から」自治体の自治権を広範に制限し、平時においても住民の権利を一方的に制限することが可能になるのが今回の「改正」です。これは「地方自治の本旨(団体自治と住民自治)」と憲法の根幹理念への攻撃以外のなにものでもないと考えます。

 通常国会では、本改正案以外にも「経済秘密保護法」、自衛隊の「統合作戦司令部」設置を可能にし、日米の軍事統合をさらに進める自衛隊設置法の改正、食料安保の名目で生産者と消費者を一元的に管理統制する「食料・農業・農村基本法」改正など、憲法の平和主義の理念を破壊し、主権者の権利を一方的に制限する法律がいくつも成立しました。この12年間にわたり着々と進められてきた、国と社会のあり方を根本的に変え、米国追従の軍拡進行国家へと進めていく政権の思惑が、今や完成に近づいているという危惧を拭い去ることができません。

 地域から平和を創り、人権が守られる社会を目指してきた私たちは、主権者である住民の権利の拡張と、今まで以上に地方公共団体の自主性と自立性が必要であると考えます。

 地方自治を圧殺する本改正案の改正部分の廃止をここに改めて強く求めます。

2024年6月30日

市民ネットワーク千葉県共同代表
川口 えみ
小室美枝子