〈声明〉3.11の教訓を忘れ、原発回帰と火力発電に頼る第7次エネルギー基本計画原案に強く抗議します
3.11の教訓を忘れ、原発回帰と火力発電に頼る第7次エネルギー基本計画原案に強く抗議します
12月17日、経済産業省は、概ね3年ごとに見直しが行われてきた国の「エネルギー基本計画」の第7次改訂原案を公表しました。これからパブリックコメントを経て、年度内の閣議決定をめざすとされていますが、市民ネットワーク千葉県は、一貫して脱原発の姿勢を表明し、真の持続可能なエネルギー政策を掲げてきた政治団体として、この「原案」には多くの異議を申し立てざるを得ません。
何よりも、2011年の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の大事故への反省から、2014年の第4次基本計画以来盛り込まれてきた「原発依存度を可能な限り低減する」との文言が削除されたことです。
確かに本「原案」でも、その冒頭に福島第一原発の大事故に対する反省が縷々記述されてはいます。しかしながら、この「原発依存度の低減」という大原則を捨て去ることには、政府が出した「原子力緊急事態宣言」が今なお解除されておらず、自主避難者をのぞいても2万5千人以上が避難生活を送らざるを得ないという現実を、あたかも「なかったこと」としてしまおうという極めて悪質な意図が見て取れます。 事実、本「原案」は「原発回帰」という、原発大事故当事国として絶対にあってはならない方向で固められています。
岸田政権下で打ち出された「GX(グリーン・トランスフォメーション)」の美名のもと、原子力発電は「脱炭素電源」に強引に位置づけられました。2040年を見据えた本「原案」では、AI 活用拡大など今後の電力需要の拡大を前提に、「再生可能エネルギー」と「原子力発電」をともに「最大限活用する」とし、前者を4~5割、後者は2割を目標とするとしています。
政府と電力業界は、この間無理矢理に原発再稼働を進め、さらに本来30年程度の稼働を前提に設計されている原子炉を、60年を超えて運転させるという信じがたい法改正も行いました。2040年に「原子力発電2割」という目標は、強引な再稼働と超長期運転を最大限に活用してようやく可能になる数字であり、測りがたい危険性を内包しています。
それは、千葉県に一番近い東海第2原発の再稼働が繰り返し延期されていることを見れば明らかです。そこで今回の「原案」では、原発新設を「建て替え(リプレース)」として容易に実施できる「原発増設」の方向が打ち出されました。しかし、それはいまだに技術が確立していない次世代革新炉に限られ、仮に建設可能になったとしても、建設費用の著しい高騰も世界的な傾向です。その費用調達を「事業・市場環境整備」の名目で国民の負担として押し付けることが画策されています。それでも発電まで20年以上かかることが常識の原発では、とても2040年には間に合いません。だからこそ、石炭火力の温存も含む、火力発電の比率を3~4割に設定しているのです。
以上からわかるように、今回のエネルギー基本計画「原案」は、原発回帰ありきのための数字合わせに過ぎません。そのためには原発事故被災者の無念の想いと尊厳、脱炭素の真の目的である気候危機対策も、また先の見えない物価高騰に喘ぐ国民生活もすべて犠牲にしてもかまわないという許しがたい愚策です。
今回の「原案」作成の審議会委員のほとんどが原発推進派で占められていたことは、多くの有識者・メディアが報じています。この「原案」は即刻白紙撤回すべきです。そして、良識と科学的知見を有する専門家による、福島の被災者をはじめ、原発の問題と未来に向けたエネルギー政策を真摯に考える市民の声を反映した、新たな基本計画の策定を強く求めます。
2024年12月21日
市民ネットワーク千葉県共同代表
川口えみ、小室みえこ