〈抗議文〉原発回帰に舵を切る「第7次エネルギー基本計画」に抗議し、抜本的な見直しを求めます。

原発回帰に舵を切る「第7次エネルギー基本計画」に抗議し、抜本的な見直しを求めます。

 2月18日「第7次エネルギー基本計画」が閣議決定されました。市民ネットワーク千葉県は、同計画「原案」発表の段階で「原発回帰」に大きく舵を切る内容に危惧を表明し、議会への意見書提出、また学習会を企画してパブコメ提出を広く呼びかけました。

しかしながら、今回決定された基本計画は、多くの国民が求める「脱原発」「自然エネルギー活用」「気候危機回避」とは全く逆方向の内容になっています。市民ネットワーク千葉県は、「第7次エネルギー基本計画」の「原発回帰方針」に断固抗議し、抜本的見直しを強く求めます。

主な理由は三点です。
 まず第一に、4万を超える過去最大数のパブリックコメントが反映されていないことです。
 2011年3月11日の東日本大震災による東京電力福島第一原発の大事故は、いまだ終息していません。にもかかわらず、事故後の2014年策定の基本計画以来盛り込まれていた「原子力依存度の可能な限りの低減」を削除し「(原発の)最大限の活用」との文言を追加する方針は変更しませんでした。このことについてパブリックコメントの批判が集中したにもかかわらず、「原子力の安全性やバックエンドの進捗に関する懸念の声があることを真摯に受け止める必要がある」とのおざなりな役所答弁を追記するだけで済ませたのです。原発大事故の教訓を糊塗し、今も故郷に帰ることがかなわず不安定な生活を強いられている被災者の痛恨の想いを踏みにじるものです。
 「原発回帰ありき」の財界の意向に追従する、相も変わらぬ民意を無視する政権の本質があらわになっています。

 第二に、進めようとしている原発回帰には、安心できる材料が全くありません。
本基本計画では、2040年度の電源構成に占める原発の割合を「2割程度」とする方針を規定しました。しかも、その「2割程度」は既存の老朽・被災原発の全てを強引に再稼動させ、さらに建設中の原発をすべて完成させてかろうじて可能となる非現実的なものです。
 核のゴミ問題解決についての明確な説明も一切ありません。また、世界の原発建設費用の高騰を完全に無視し、新規建設費の試算を「7203億円」と超過小評価をしていることも問題です。しかも、確実に膨れ上がる建設費用その他に対し、「政府機関が債務保証を検討する」とも明記されています。必ず発生するリスクとそれに伴うコストを将来世代にわたる国民に負担させるものです。

 第三に、火力発電の温存が図られていることです。これは気候変動対策に逆行することももちろん、さらに静かに黙って国民負担を増やす政策が採られています。本基本計画では「再エネ最大活用」を謳いながら、火力発電は2040年度でも「3〜4割を維持」とされています。2040年に「温室効果ガスを73%削減」するとの本計画の目標は、この火力発電依存では絶対に不可能です。そこで「2040年には火力の5〜9割がCCS(二酸化炭素回収・貯留)火力、水素・アンモニア火力になる」という前提に立っていますが、この技術は実用化されておらず、今後の進展も見えていません。さらに「水素・アンモニア」については、昨年10月に施行された「水素社会推進法」により、「化石燃料との価格差を政府が15年間に渡って補助する」つまり国民の負担に課すとされました。しかしその周知が全くされていません。

 先般の「日米共同声明」で無責任に石破首相が約束した LNG 日米共同開発がしめす火力発電温存のために、私たち国民に将来にわたる無駄な負担を強いることは認められません。
 直面する気候危機を回避し、原発事故を二度と繰り返さないためには脱原発政策を推進する以外あり得ません。

以上より、「脱原発」と「再生可能エネルギー推進」を政策の大きな柱として活動してきた市民ネットワーク千葉県は、「第7次エネルギー基本計画」の「原発回帰方針」に断固抗議し、抜本的見直しを強く求めます。

2025年3月1日
市民ネットワーク千葉県
共同代表 川口えみ 小室美枝子