〈声明〉玉城デニー沖縄県知事の改良工事不承認を貫く姿勢を全面的に支持し、地方分権の遵守と本代執行提訴の取り下げを求める声明
玉城デニー沖縄県知事の改良工事不承認を貫く姿勢を全面的に支持し、地方分権の遵守と本代執行提訴の取り下げを求める声明
沖縄の米海兵隊普天間基地の返還と辺野古への移設をめぐる混乱は、返還・移設を明記したSACO 合意より実に27年に及びます。安倍政権下での強引な埋立て開始からも6年近くが過ぎました。私たち市民ネットワーク千葉県は、この辺野古への移設計画の当初より、一貫して辺野古新基地建設反対を訴え、辺野古現地での座り込み行動への参加も含めた様々な抗議活動を続けてきました。
辺野古新基地建設反対の理由は、かけがえのない貴重な自然環境の破壊、新基地建設による日米軍事一体化の更なる強化と東アジアの安全保障環境の著しい劣化、そして目に余る地方自治の蹂躙です。
10月5日、斉藤鉄夫国土交通相は、9月の最高裁判決を受けた軟弱地盤の改良工事の設計変更申請について、国が県に代わって申請を承認するよう「代執行」の訴訟を起こしました。本日10月30日、その第1回口頭弁論が開かれ、玉城デニー沖縄県知事も意見陳述に臨みます。国は即日結審を求めており情勢は予断を許しません。
そもそも、問題の発端は、辺野古新基地建設の主要部分である大浦湾の海底に極めて軟弱な地盤が存在していることを、沖縄防衛局は調査で認知しておきながら隠蔽していたこと、それが明らかにされると、現実的な工法の目途もないにもかかわらず杜撰な設計変更を申請し、沖縄県に承認を強要したことです。
100人を超える行政法研究者の賛同を得た「声明」で指摘されているとおり、最高裁は最重要なこの軟弱地盤対策については一切触れていません。すでに多額の税金がつぎ込まれた工事にさらに予測不可能な金額を積み重ね、環境を破壊し、結果として使い物にならない基地を造るのか、工事そのものが可能なのか、という争点は完全に回避されているのです。そのうえ、沖縄県側には弁論の機会すら与えませんでした。まさしく不合理で不当な判決です。
地方自治法では「最後の手段」とも言える代執行に向けた手続きを進める条件として①県が国の代わりに行う事務を怠った明らかな違反があること、②「代執行」以外の方法での是正が困難であること、③著しく公益を害することが明らかであること、の3つが示されています。しかしながら、今回の「代執行」訴状を見る限り、そのすべてにおいて国の主張は全く根拠がありません。とりわけ、②については、県との協議を一切行わなかったこと、③については、「公益」を「国の利益」のみに限定していることは、地方分権改革の基本である「国と自治体は対等の関係」に完全に違反しています。訴えの要件を満たしていないとしか断じようがありません。10月18日提出の沖縄県の答弁書の正当性は明らかです。裁判所においてはこの答弁書を最大限尊重した司法判断をするべきです。
さらに、全国知事会も、2021年以来、沖縄県の問題提起を受け、今回のような介入=「裁定的関与」のあり方の見直しを強く求めています。
市民ネットワーク千葉県は、「地域に根ざし、地域から平和をつくり、憲法の理念を活かす」を政策の根幹として30数年活動を続けてきました。憲法で保障されている「地方自治の本旨」を蔑ろにする国の「代執行」訴訟と、それに唯唯諾諾と追従する司法に対し、これは沖縄県だけの問題ではないとの危機感を強く持ちます。玉城デニー沖縄県知事の改良工事不承認を貫く姿勢を全面的に支持し、本代執行提訴の取り下げを求めます。根拠なき「辺野古新基地ありき」の前提を見直し、繰り返し示された辺野古問題に対する沖縄県民の民意に真摯に向き合うことも求めます。工事の即刻中止と浅瀬部分がほとんど埋め立てられてしまった辺野古の自然環境の回復と保全、基地強化ではなく平和憲法に則った平和外交政策の推進こそが「公益」であることを訴えます。
2023年10月30日
市民ネットワーク千葉県共同代表
川口 えみ
伊藤とし子
岩﨑 明子