〈声明文〉日本学術会議を法人化する法律の成立に抗議し、即時撤回を求めます。

6月11日参議院本会議で日本学術会議法案の採決がおこなわれ、自民・公明・維新の賛成多数で可決・成立しました。
学問の自由が脅かされる事態になり、戦前回帰が進んでいます。市民ネットワーク千葉県はこの法律の成立に抗議し、声明文を発出しました。

〈声明文〉日本学術会議を法人化する法律の成立に抗議し、即時撤回を求めます。

 6月11日、参議院本会議で、日本学術会議を国から独立した法人とするための法案が自民党、公明党、日本維新の会他の賛成により可決・成立しました。新法に基づく法人としての学術会議は来年10月に発足することになります。
 菅政権下の2020年、6名の会員候補者の任命が理由の開示もなく拒否されました。それ以来、日本学術会議への政府の介入姿勢が強化され、同会議の法人化への動きが自民党を中心に顕著になりました。


 今回の「法人化」法案について、政府は同会議の「独立性・自立性を高める」と繰り返し強調しました。しかし、内閣府に置かれる「特別の機関」である学術会議の独立性については、当の内閣府の有識者会議が、現行制度での「独立性は担保されている」「制度を変える理由は見いだせない」との結論を2015年に表明しています。   

学術会議のように、政府から財政的支援や公認を受けた学術団体をナショナル・アカデミーと呼びますが、国際的には次の5要件があります。

①学術的に国を代表する地位、②国を代表する公的資格、③国庫支出による安定した財政基盤、④活動面での政府からの独立、⑤会員選考における自主・独立性が必要であること。しかし、今回の新法では、その全てに政府の関与・介入、場合によっては操作が可能になります。さらに、これまで存在していなかった違反者への「禁固刑」をも含む「罰則」規定すら定められています。
 このことは、本来自由で闊達であるべき学術研究から主体的判断を奪い、萎縮させ、政府の意図に従う学術研究のみが助長される事態になりかねません。

 それを顕著に現わしているのが、現行法の前文にある「わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献」という、1949年の学術会議発足時の理念を示す文言が、新法では完全に削除されていることです。大戦時の科学者の戦争協力への反省から、学術会議は、戦争・軍事目的の研究活動への強い懸念を繰り返し表明してきました。この姿勢が、毎年大幅に増額される防衛予算の中で、大学・研究機関での軍事研究予算の大幅な執行を抑えてきたと言えます。

 安全保障と学術研究のあり方については、国民による幅広い世論喚起と国会での十分な論議が不可欠です。これらを一切行わず、学術会議の組織改編だけで研究活動の「戦争加担」を容易にさせようとする政府の姿勢は、きわめて問題です。

 市民ネットワーク千葉県は、会員任命拒否以来、日本学術会議への政府の介入に抗議し、声明や意見書案を繰り返し発表・提出してきました。今回の新法成立の強行は、単に学術会議のみの問題ではなく、思想信条の自由を謳った憲法をないがしろにし、民主主義を破壊する行為であると言わざるをえません。
 日本学術会議を法人化する法律の成立に抗議し、即時撤回を政府・国会に強く求めます。

2025年6月16日
市民ネットワーク千葉県
共同代表 川口絵未 小室美枝子