〔抗議声明〕「重要土地調査・規制法案」強行採決に抗議します
「重要土地調査・規制法案」強行採決に抗議します
6月16日午前2時28分、参議院本会議において「国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等に関する法律案」が、与党と国民民主、維新等の賛成により可決・成立しました。政府が安全保障上重要と判断した施設周辺を「注視区域」「特別注視区域」に指定し、土地利用や住民の調査、利用の規制が可能となり、命令等に反した場合は刑事罰が科されます。
14日の参院内閣委員会での参考人質疑に続き、15日夜の同委員会での採決強行、さらに日をまたいでの本会議延長手続きを行ってまで、与党が強引に成立させた本法案に対しては、衆参合計20数時間の審議しか行われませんでした。審議の拙速さは、法案の内容にも如実に表れています。法案第3条の「内閣総理大臣は、国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等に関する基本的な方針を定めなければならない」が示すように、法律の具体的な内容は一切条文に明記されず、法案成立後に政令等で定める、つまり内閣に一任してしまうものとなっています。国会軽視も甚だしいものであり、短い審議時間に次々に明らかになった問題点は、すべて法案のこの根本的欠陥から生じるものです。
まず、外国資本による防衛施設周辺の土地購入が安全保障上のリスクであるという政府の提案理由についてです。防衛省が8年を費やして自衛隊と米軍基地周辺約6万筆の「隣接地」を調査した結果、外国人所有はわずか7筆であったこと、また、日本人も含めた「隣接地」所有で自衛隊や米軍の運用に具体的な支障が生じたことはない、とそれぞれ防衛省側が答弁しているのです。立法事実に欠けるものであることは明白です。
さらに、「注視区域」「特別注視区域」の基準となる「特定重要施設」「生活関連施設」など、具体的な対象は一切明記されず、その指定は内閣総理大臣にゆだねられています。さらにもっぱら「周囲約1キロ」とされている「区域」ですが、条文にはそんな数字はありません。「調査」対象者、「調査」内容も明記されていません。すべてが成立後の閣議決定、政令、府令にゆだねられ、どこまでも拡大していく危険性があります。そのうえ、法施行後は国会の関与も不要で、第三者によるチェック機能も定義されていないのです。
「国民生活の基盤の維持」「我が国の領海等の保全及び安全保障に寄与する」というあいまいな理由で、主権者に対し罰則を伴う私権制限を行使できるこのような法律は、政府と内閣総理大臣に極めて強大な権力を付与することになり、立憲主義の原則に完全に反します。内閣総理大臣と政府機関主導で主権者の基本的人権を理不尽に制限する構図は、先に成立した「デジタル改革関連法案」に酷似しています。
私たち市民ネットワーク千葉県は、立法事実もなく、立憲主義の原則に反する法律案が、拙速な審議だけで強行採決されたことに強く抗議し、本法を施行することなく廃止することを政府に対し求めます。
2021年6月17日
市民ネットワーク千葉県
共同代表 伊藤とし子 小室美枝子